MAKOA(7)
あの日以来、なんとなく会えないでいた。
祭りの片付けの後、連絡したけれど、
「昨日、みんな慣れないカヴァを飲みすぎちゃって今大変で・・・」
とか、「今みんなで出かけてて、とか。」
みんな、か。そうだよな。俺は「みんな」には会えないからな。
その「みんな」は前にリリアナと料理のお裾分けに行ったときに会った子達だった。
だから、俺が結婚していることを知っている。
彼女は「みんな」という言葉で俺を遠ざけているように思えた。
「マコア?何しているの?」
・・・・
「あぁ、今日だったわね。」
もう20年近くなる。この日、島に大きな嵐が来た。
俺の父と母は村で取れた果実を小さな船で街まで売りに行く仕事をしていて、、、
それで、、、。その帰りに嵐にあった。
なんで嵐の中帰ろうとしたのか、俺は知っている。
「誕生日おめでとう。マコア」
「…ありがとう。」
おめでとうか…
俺は村長だったリリアナの父に引き取られ、育った。おじさんには感謝している。
この島の事、生きていく術、たくさんのことを教えてもらった。
「スラニを、リリアナを頼むぞ。」
晩年のおじさんの言葉だ。強く握られた手。
静かな部屋に「はい。」俺の声だけが響いた。
「あの日から私たちはもう家族になったのよね。」
リリアナが強い口調で家族と言った。
でも、、、俺にとっては、、
「俺にとっては、、、家族を失った日でもある。」
リリアナの表情が変わる。
「まだそんなことを。」
「あなたはいつまで感傷に浸っているの?」
「なぜ父を一度もお父さんと呼ばないの?」
「今までうまくやってきたじゃない。」
「私が言うとおりにすれば幸せでいられるから。」
「村のみんなにも色々言われているのよ私!」
「あなたが私と別れたいのはもうわかったわ。」
「みんなにはなんて説明するの?私は絶対に別れないから!」
「父との約束を破るのね!」
「リリアナ、俺は君の所有物じゃない。」
「おじさんにはお世話になった。君のことも嫌いなわけじゃないんだ。」
「・・・君は俺が好きなわけじゃない。」
「約束に俺を縛り付けているだけだ。」
「周りの目ばかり気にして。俺は君にとっての何だ?」
「俺はおじさんのようにはなれないよ。君の言うとおりにもできない。」
リリアナは目に涙を浮かべて悔しそうに黙り、俺に背を向けて仕事に向かった。
そのまま俺はただ海を眺めていた。
ずっとこの海が、村が、大好きで、大嫌いだった。