MAKOA(8)

真夜中になり、いらいらした気持ちと持ちきれないほど沢山の感情をどうすることもできず海沿いを歩いていた。

電話だ。彼女からだった。

「いつもの海で。」

「お願いがあります・・・」

 

村の正装で来てほしい。

 

なんでだ?どうして?

聞こうか、いや、走ってすぐに会いに行こう。

急いで帰って着替えて向かった。リリアナが帰ってきている。後ろから叫びのようなリリアナの声が聞こえた。もう振り返らなかった。

 

 

いつもの海。でもいつものとは違っていた。

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「今日は特別な日だから。」

 

久しぶりに会った彼女は村の正装をしていた。なんで?と聞く間もなく

「マコアくん、空への手紙、書こう?」と彼女が言った。

それぞれの思いをランタンに書いて空へと飛ばした。

 

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毎年この日、人魚達はランタンを空へ飛ばすそうだ。

あの嵐で失った命を思いながら。

人間だけじゃなく多くの人魚達も犠牲になったらしい。

「知らなかった。」

「あの嵐の日ね、助けてもらったの。人間のご夫婦に。」

「・・・!!」

「まだ上手く泳げなくて、家族ともはぐれて。そしたら船に乗せてくれてね、」

「大丈夫だよ。って言ってくれたの。」

「怖がる私を安心させるためにいっぱい話してくれた。私と同じくらいの子がいて誕生日だから帰ってあげないとって。」

「人魚に会ったっていったら、きっと喜ぶわって。」

「マコアが喜ぶわって・・・」

「私まだ人間の言葉喋れなくて、助けてくれてありがとうって言えなくって」

「そしてまた高波がきてね・・・」

彼女はそれ以上話すことができなかった。

 

「話してくれてありがとう。」

 

いろいろなモヤモヤも苛立ちも、悲しみも。すべて心の棚に綺麗に収まったような不思議な気持ちになった。

俺は俺だ。父と母に愛され、恵まれた環境で育ち、リリアナと結婚しナニが生まれた。

そして、初めて誰かを心から愛した。

いままで、どこか誰かの人生を辿るようにただ歩いてきたような気がしていた。

ようやく自分が自分を見つけた。ずっと今まで誰かに譲ってきた自分の気持ち。

もう譲れないと思った。

帰ったら、きちんと話しあおう。そう思った。

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そして、俺が彼女を幸せにできたら。