MAKOA(9)
あの日から、彼女とは会えない。いくら待とうと、いくら思おうと。
家にも帰っていないらしい。彼女の友達は俺が彼女のことを聞いた時に驚いた顔をしていた。そりゃそうだよな。リリアナが自慢げに時期村長よ、と紹介した男が訪ねてきたんだから。
リリアナとは話し合いをした。何度も謝ったが、謝るほど遠回りをするような、そんな感じだ。
俺は本当に勝手で。自分を肯定することは、誰かを否定することでもあると知った。
リリアナとナニとの時間を、俺は後悔していない。
心の底から申し訳ない思いと、譲れない気持ちと、丁寧に伝えていった。
なぁ、、今どこにいるんだ。
この海の底にいるのか、今も俺を見ていてくれよ。
何日、何週間、何か月経ったのだろう。
リリアナ、ナニ、ごめん。
もう家には戻れない。
俺は家を出た。
ただ、ひたすら彼女を思い続けた。
家を出ても俺にはこの村しかない。家を借りて仕事と、、あの海に通うだけの毎日を送っている。
たまにナニが来る。いつの間にか赤ちゃんではなくなっていた。
大きくなったら村を出るらしい。このままだとターネと結婚させられるからだと。
俺には何も言えなかった。
ありがたいことにナニは俺を恨んではいない・・・と思う。たぶん。
ナニのことは、、愛している。そんなこと言える父親ではないけれど。
リリアナは、、元気でやっているらしい。
堂々巡りの思いは消えないけれど、家を出たことに後悔はなかった。
彼女に会いたい、ただそれだけ。