MAKOA(10)
今日も会えない。明日も会えないのか。いつ会えるのだろう。
このまま一生会えないのかもな、いや、絶対に探し出す。
今までの時間をひとつひとつ全部忘れたくなくて、でも確実に薄れていく彼女の記憶をつなぎとめていたい。
「なぁ、水に入る時は靴は脱ぐもんだぞ?」
「そうなの?」
「そんなに水につかって大丈夫か?そろそろ人魚になるんじゃないか?」
「だいじょーぶだよ♪」
前に彼女が新しくできたホテルに友達と行くと聞いて。俺は行けないと言ったけれど、なんとか行けた日。
到着したのは真夜中だったし、すぐに帰らないと行けなかったけど、彼女はすごく喜んでくれた。
「泣いてるの?」
「違うよ、水の中では泣けないんだよ」
そんな彼女の言葉を何度も何度も思い出す。
彼女の顔も声も。一瞬でも忘れたくない。