MAKOA(13)
あたりを駆け回った。絶対に近くにいると思った。
あたりが明るくなり始めたころ。
滝の前で彼女を見つけた。やっと会えた。本当にやっと。
ゆっくり近づいて手を握る。
「マコアくん?なんでここにいるの?」
「ダメだよ」
「ちゃんとお家帰って。リリアナさんとナニちゃんのところにいってあげて。」
やっぱり、彼女は今も俺を見ていてくれた。
愛しくて愛しくてまた涙が溢れる。
「もうリリアナとは終わったんだ。」
「えっ?」
「今日、最後の話し合いをしてきた。」
「だから・・・」
「ダメだよ。」
「ごめんなさい。」
そう言って彼女はまた泣いてしまった。
「私はずるいよ、知っていたのに。」
「奥さんがいることも、ナニちゃんのことも。」
「あの日、マコアくんが水面に出てこなくて、マコアくんのお父さんたちの事を思い出したの。」
「怖くなって、もう目の前で失いたくなくて、、、必死で、、、
助けた後ほんとうはすぐに立ち去るつもりだった。でも・・・
離れたくなくなって、、。」
「それは、俺が明日も会いたいっていったからだろ?」
「それでも、会いに行っちゃいけなかった。お祭りの日も、、、」
彼女の声がだんだん震えて声にならなくなっている。
「マコアくんの幸せを考えたら出会う前に戻ったほうがいい」
「私がマコアくんの幸せを壊した。家族を壊した。」
「マコアくんが結婚した時、やっと家族ができてうれしいはずなのに。一人ぼっちじゃなくなったって思ったのに。泣いてる自分がいたの。」
「おかしいよね、私、人魚なのに。一緒になれないのに。」
「・・・ほんとはずっと前からマコアくんのこと、心から好きだった」
「マコアくんに幸せでいてほしかったのに。」
「セレニティー、聞いて。」
「あの日、、、俺はあのまま海に沈もうとしていたんだ。」
「え?」
「両親を海で亡くしたあと、リリアナのお父さんに引き取られた。」
・
・・
・・・・・・・・・今までのことを彼女に話した。
「おじさんに言われた通り、海を守り、村を守り、当たり前のようにリリアナと結婚をして、当たり前のように子供をつくって」
「別にそれが嫌だったわけじゃないよ。幸せってこういうことかなと思ってた。
ただ、俺の気持ちとは関係なく毎日が過ぎて」
「俺は生きてるのかなって。生きるってなんなんだろうってずっと思ってた」
「高波にさらわれた時、苦しくなくて。このまま両親のところに行くのもいいかもなって・・」
「ダメだよ!」
「ふっ…。うん。そうだな。」
「なぁセレニティー、」
「俺が生きる意味は、、、君だよ」
「俺とずっと一緒にいて」
俺にずっと明日を生きる意味を教えてよ